ミニチュアカー ミュージアム

VIP CAR VIPの車

イギリス王室御料車

儀式用ランドー型馬車

   イギリスには日本と同じ様に長い歴史のある王室があります。イギリスのVIP CARとしてこの王室の御料車について紹介致します。自動車の話題にいく前にパレード用馬車のすばらしいモデルがありますので、まずそちらから紹介致します。1952年に即位された現在のエリザベス女王の25周年記念(シルバー ジュビリー)パレードに使われた馬車(1902年式)を忠実に再現したモデルで1977年にコーギーから発売されました。縮尺は1/40で全長が約30cmもある大きなモデルで、細かいところまで再現されコーギー十八番の彩色されたフィギュアーも付いています。
state landau 1977
 名前の「STATE LANDAU」とは儀式用ランドー型馬車という意味でこのような華やかなパレードで使われる馬車です。日本の皇太子の婚礼パレードでも同じような馬車が使われていました。なおこの馬車は本来6頭立てなのですが、コストの関係で4頭立てとしてモデル化されています。
馬車の後ろに注意して頂くと小さな犬がいますが、この犬はウェルシュ コーギーという種類で王室で愛玩されています。コーギー社の名前はこの犬に由来していてコーギーのトレードマークでもありますので、ちょっとした遊び心でさりげなくコーギーをPRしています。

 

 上の全体画像の上にマウスカーソルを載せると載せた部分の拡大画像が下に表示されるようになっています。また下の画像の上にマウスカーソルを載せると、女王とエジンバラ公の正面からの拡大画像となります。ちなみに2002年の50周年記念(ゴールド ジュビリー)としてこのモデルの新しいバージョンが2004年頃に発売されています。

state landau 1977

 

STATE LANDAU THE QUEEN'S SILVER JUBILEE 1977
CORGI製 1/40
   

自動車の導入

 では本題の自動車に戻ります。イギリスの高級車といえば誰でもロールス ロイスを思い浮かべると思いますが、意外なことに戦前までイギリス王室の御料車として長い間使われてきた車はロールス ロイスではなくではなくディムラーという車でした。ディムラー社は1896年に創立されたイギリス最古の自動車メーカーで、当時のダイムラー社(現在のダイムラー クライスラー社)のエンジン特許を買い取りイギリスでダイムラー車の国産化を行っていました。英語での表記はダイムラーもディムラーも「Daimler」でどちらも同じなのですが、ダイムラーと区別してディムラーと表記します。(実際の発音がディムラーと聞こえるそうです)

 

  イギリス王室で初めて車を使ったのはプリンス オブ ウェールズ(1901年に即位したエドワード7世の皇太子時代の名前)で、初期の車に興味をもたれ当時の蒸気自動車やドイツ製ダイムラーに試乗されています。このドイツ製ダイムラーを気にいった皇太子は国産されたディムラー(2気筒6HP)を1900年に購入しています。皇太子がこの車に乗っている写真がありますが、この車は特別な車ではなく当時の標準仕様の車だったようです。 この車そのもののミニカーはありませんので、車種は違いますが同時期の似たような感じの車のミニカーをお見せします。同時期のルノーで車の大きさやシートの配置などはよく似ています。なおこの車は当時のルノーの特徴でラジエータがボンネットの横についていますが、ディムラーではフロントの下に付いていました。

renault 1900
RENAULT TONNEAU 1900 RAMI製 1/43
 

初代 御料車 (ディムラー御料車の時代)

 プリンス オブ ウェールズは自動車に理解があったようで、赤旗法(自動車の路上走行を制限する法律)の廃止に力を貸すなどしてイギリスのモータリーゼーション進展に貢献されています。そのような訳で皇太子が即位されたエドワード7世の時代は、クラシックカーの時代分類にてエドワード期と呼ばれています。エドワード7世が1902年式ディムラー 22HPを王室最初の御料車に指定したことで、それ以後の約半世紀の王室御料車はディムラーが担当するようになりました。ディムラーは御料車に指定されたことで上流階級の人気を得て業績を伸ばしていきました。

 

 エドワード7世の次のジョージ5世の時代(1910~36)にもディムラーが引き続き御料車に採用されています。この当時のディムラーのミニカーは少ないのですが、そのミニカーの一つとしてコーギーのディムラー 38HPを紹介致します。1910年のモデルですので、ジョージ5世時代に使われた車です。静粛性の高いスリーブ バルブ方式の6気筒9.4Lエンジンを搭載していました。なお御料車はこのようなオープン形式のボディではなく、運転席より後ろの客室が密閉されたリムジーン形式のボディでした。

 

 ミニカーは当時の服装をしたフィギュアーがついていて、とても楽しいものですが、クラシックカーのスケールモデルとしてみても精巧に出来ています。全体的なフォルムは当時のディムラーの角張った感じがよく出ていますし、ディムラーの最大の特徴であるラジエータグリル上部のフルート(縦溝)もしっかり表現されています。

daimler 38hp 1910
DAIMLER 38HP 1910 CORGI製 1/43
画像をクリックするとグリルのフルートが良くわかる画像になります
 
 1926年にディムラーからイギリス初の12気筒エンジンを搭載したダブル シックスが発表されました。1929年にジョージ5世は自分と妻のメアリー王女用に2台のダブル シックスを購入しています。このダブル シックスの御料車は全長約5mのフーパー製ボディを架装したリムジーンで、エンジンはV型12気筒3.8Lを搭載していました。(ダブル シックスには排気量が3.8Lと7.2Lの2種類がありました) この車は御料車の役目が終わった後で.いったんディムラー社に返却され、その後1968年にエリザベス女王にプレゼントされ、現在はレストアされてサンドリンガム博物館(the Sandringham Museum)に保管されています。(ディムラー ダブル シックス 実車画像)
daimler double six       daimler double six 2
DAIMLER DOUBLE SIX 30 BROUGHAM 'KING GEORGE V' 1929 OXFORD 1/43
画像をクリックするとの後方からの画像に変わります/画像をクリックするとのマスコットの画像に変わります
   
 ミニカーは2012年に発売されたオックスフォード製で、実車にかなり忠実にモデル化されています。まずボディカラーは王室カラーの溜色(ためいろ:濃い小豆色)と黒のツートンで塗り分けられ、ドアは赤いライン ストライプで縁取られています。ドアとリアには王室の紋章がプリントされていて、屋根にも紋章と王旗が備え付けられています。通常はニッケルムメッキされているフロントグリルが黒く塗装されているのは御料車の証で、さらにイギリスを擬人化した女神ブリタニアのマスコットも付いています。(多分こんな感じの図柄のマスコットだと思いますが、あまりそれらしく見えません)

 

 室内も運転席との仕切り(パーティション)部分の造形や青い革張りの内装などが、あまり細かくはないですが、そこそこ再現されています。少し変わっているのがホイールで、透明プラスチックで出来たホイールにスポークのパーツが被せてあります。この辺の造形はイクソやミニチャンプスの方が上手ですが、ホイールの強度に配慮した設計で良心的な物作りの姿勢が感じられます。(あまりに繊細で触るだけで壊れそうなパーツが最近は多いです) なお緑色の色違いでメアリー王女用の御料車もモデル化されるようです。

 

 ディムラーはその後もV型12気筒7.2Lエンジンを搭載したダブル シックスや8気筒エンジンを搭載したストレート エイトなどが御料車に採用されています。 第二次世界大戦後ディムラーは経営不振に陥り、1960年にジャガーに吸収合併されています。ジャガーに吸収された後も伝統のあるディムラーの名前はジャガーより車格の高い車として残りましたが、フロントグリルのフルート部分だけが違うだけで基本的にはジャガーの姉妹車となってしまいました。

 

ロールス ロイス御料車の時代

 イギリス王室は1950年に長年の慣例を破りエリザベス王女とエジンバラ公の車としてロールス ロイスを購入します。このロールス ロイスは王族や国家元首の為に特別に16台(18台との資料もある)だけが手作りされたファントム IVの第一号車でした。ロールス ロイス社の様々なサポートが評価されて1955年にロールス ロイスが正式な御料車となりディムラーは準公用車となります。50年の伝統が破られた理由は、まず経営状況の悪化したディムラーに御料車を任せることに不安があったこと、次に知名度的にディムラーはマイナーな存在で(ミニカーがほとんどないのもそのせいです)当時のイギリスを代表するロールス ロイスのほうが御料車にふさわしくなってきたことなどでしょうか。

 

 この車は直列8気筒5.7L(約170HP)エンジンを搭載し全長5766mm全幅1956mm全高1880mmで車重は2tを越える重厚なリムジーンでしたが、それでも最高速度は160km/h出せたそうです。室内はもちろん当時の最高級の仕様となっていますが、時代を反映してエアコンではなくヒータと換気装置、オーディオではなく2スピーカーのラジオとなっています。また防弾仕様などの記載はありませんのでイギリスではまだそのようなことをあまり考慮しなくてもよかった時代のようです。

 このロールス ロイス ファントム IVのミニカーはフランスのレックストイが手掛けていてカタログによれば7種類がモデル化されています。それらの2台が以下のミニカーで左側がイギリス王室御料車で右側がスペイン国王(フランコ総裁か?)の車です。2台の車両のサイズはまったく同じですが、違いはまず後席の窓の大きさです。御料車は後席に乗られている女王のお顔がよく見えるよう、リヤサイドウィンドーが不格好なぐらいに大きくなっています。(プライバシー保護のため内側からブラインドを掛けることが出来ますが)

rr phantom4 queen      rr phantom4 king spain
ROLLS ROYCE PHANTOM IV LIMOUSINE
H.M. THE QUEEN OF ENGLAND REXTOY製 1/43
画像をクリックすると後方からの画像に変わります
ROLLS ROYCE PHANTOM IV LIMOUSINE
THE KING OF SPAIN REXTOY製 1/43
画像をクリックすると後方からの画像に変わります
 
 次にラジエータ上のマスコットですが通常は有名な「フライイング レディ」が付くのですが、御料車に女王が乗車されている場合には下の画像のようなマスコットに付け替えるそうです。これは守護神「龍を退治するセント ジョージ」といって、やや分かりにくいですが前足を上げた馬の上で槍を持った人物が(龍のいる)下を狙っている構図となっています。(ロールス ロイスのミニカーでこのマスコットが再現されているのはこれだけだと思います)

 

  さらにフロント ガラスの上に御料車であることを示すマーカーランプが付いていて小さく青色(ロイヤル ブルー)に塗られています。実車ではこのマーカーランプの後ろに王室の紋章と旗を立てる為のソケットが付いています。このミニカーではそこは再現されておらず紋章と旗も付いていません。マスコットをきちんと変えてあるだけに、この紋章と旗が省略されているのはやや不可解です。(王室の許可などがとれなかったのかもしれません?)

 この御料車のボディカラーは王室カラーの溜色(ためいろ:濃い小豆色)になっていますが、1950年にエリザベス王女用として購入された車はダークグリーンだったようでその車のミニカーもレックストイにあります。私の推測ですがこの溜色の御料車は女王が即位された1952年以降に最初のダークグリーンの車を塗り替えた車ではないかと思います。(確証はありませんが )

rr phantom4 queen
セント ジョージのマスコット 屋根のマーカーランプ
画像の上にマウスカーソルをのせるとマーカーランプに変わります
 なおこの車とは別にパレード用として1954年?に購入されたファントム IVでルーフの後部が革製で折りたためるようになっているランドレー形式の御料車も存在しました。後席以外は全く同じ仕様のようで、後席をオープンにしている実車の写真があります。
 
 アメリカの大統領専用車はリース契約でしたが、イギリスの御料車は一般のユーザー同様に王室がディーラーから購入しており購入する際の税金もちゃんと払っているそうです。またこのファントム IVは通常は専任運転手が運転しますが、エジンバラ公自身が運転されることも考慮した豪華な運転席となっていました。(実際に運転したかどうかは??ですが)

ロールス ロイス特別仕様御料車

 1959年にロールス ロイス ファントム Vが発表され、1960年にはこの車をベースにしてパレード用の特別仕様車が作られました。エンジンはV型8気筒6.2Lで大きさは全長6045mm全幅2007mm全高1880mmとファントム IVより大きくなっています。この車の外観上の特徴はその後部客室部分で、通常のリムジーンより約125mm高くされた屋根と大きなガラス窓で客室部分は温室のような感じになっています。ファントム IVのパレード用御料車はランドレー形式のオープンカーでしたが、やはり警備上の問題からこのような形となったものと思われます。(ガラスはたぶん防弾仕様であると思います)なおサンルーフを電動のブラインドで閉じてリアウインドー全体にアルミニウム製のカバーを被せることで必要なときにはプライバシーが保てるようになっていました。

 この車にはとても素晴らしいミニカーがあります。イギリスのスポットオンが1963年に製作したもので、背の高い独特のスタイルと温室のような客室が忠実に再現されていて室内にはエリザベス女王とエジンバラ公のフィギュアが乗っています。先ほどのファントム4では省略されていたルーフ上の王室の赤い紋章と旗もきちんと付いています。(マスコットはフライイング レディのままですが、これはまあ気にしないことにしましょう)

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ROLLS ROYCE ROYAL SPOT-ON製 1/42
画像をクリックすると後方からの画像に変わります/画像をクリックすると紋章と旗部分の画像に変わりま
 実はこのミニカーには曰く付きのエピソードがあります。このミニカーには単3電池を使ってフロントとリアのライトが点灯するギミックが付いています。(左の画像でそのギミックの動作を見てください リアは小さなライトがかすかに明るくなる程度です) その電池を格納するスペースが座席下にあるのですが、そのスペースの為に多分後から追加することになったフィギュアの足の部分が収納できなくなり、なんとフィギュアの足を切断してしまったのです。外からは分からないように足部分は膝掛けのようなもので覆ってありましたが、これが王室の逆鱗にふれてしまいイギリスでは発売されてすぐに販売中止になってしまいました。販売中止になる前に輸出されていた分があって日本では買えました。
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ライト点灯ギミック 画像の上にマウスカーソルを載せると点灯します
   
 販売された数が少ない上にミニカーの出来がすばらしいこともあって、このミニカーはマニアにとっては大変貴重なものなのです。私もミニカーを集め始めたときからずっとこのミニカーを探していたのですが、屋根の旗などが欠品していない程度の良いものはなかなか見つからず入手できたのはつい数年前のことです。(インターネット オークションのおかげです)
 

 ファントム Vは1962年からヘッドライトが2灯式から4灯式に変わりモダンなフロントマスクになります。1968年にはエンジン出力を向上させるなどの変更が行われファントム Vはファントム VIに変わります。ファントム VIは基本的な構造はそのままで1992年までの長い間ロールス ロイスのなかでも一般(お金持ち)向けではないVIP専用車として注文生産が続けられていました。

 1978年には女王即位25周年を祝ってイギリスの自動車製造 販売業者協会がファントム VIのパレード用御料車を献上しています。このファントム VI御料車はファントム V御料車の高い屋根と温室のような客室部分などはまったく同じですが、フロントが4灯式のデザインに変わっています。

 以下がファントム Vとファントム VIのミニカーです。左側が4灯式のフロントマスクとなっているディンキーのファントム Vで右側がトミカ ダンディのファントム VIです。実車の大きさを反映して大柄なミニカーで、どちらもロールス ロイスの旗艦ということから力の入った素晴らしい出来となっています。ディンキーはドア、ボンネット、トランクのすべてが開閉するフルギミックで、ライトにダイヤカットガラスが使われているフロントマスクはこれぞロールス ロイスといった風格が感じられます。ダンディもフルギミックで室内に起毛仕上げが施されているなどこちらも凝った作りのミニカーになっています。

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ROLLS ROYCE PHANTOM V DINKY製 1/43
画像をクリックすると正面からの画像に変わります
ROLLS ROYCE PHANTOM VI  DANDY製 1/43
画像をクリックすると後方からの画像に変わります
   
 ロールス ロイス社は航空機エンジン部門の不振により1971年に倒産します。ロールス ロイス社の自動車部門は新しいロールス ロイスとして独立しますが、ベンツなどの新興高級車メーカーに押されて業績が悪化し1992年にはBMWと提携しています。BMWと提携後の1998年にはBMW製V型12気筒エンジンを搭載した新型のシルバーセラフが発表されています。その1998年には親会社のビッカース社がロールス ロイスのブランド売却を決定し、BMWとVW(フォルクス ワーゲン)がこのブランドの争奪戦を行い最終的にはロールス ロイスのブランド使用権をBMWが取得し、VWはロールス ロイスの会社とベントレーのブランドを取得しました。時代の流れとはいえ由緒あるロールス ロイス ブランドが実質的に消滅してしまったことは大変残念なことでした。
   

ディムラー DS420 御料車 

 ディムラーは1960年にジャガーに吸収合併され、ジャガーの姉妹車となってしまいました。ただ最上級車であるDS420だけはジャガー マーク Xと同じシャーシ(エンジン)ではありましたが、デイムラー独自のボディを 持つ車種として存続していました。DS420の主たる顧客はイギリス王室とイギリス政府で公用車として使われていました。1968年から1992年まで長い期間生産されていましたが、ほぼ手作りに近い少量生産で総生産台数は4000台ほどだったとのことです。

 DS420のフロント部分の4灯式ライトはジャガーですが、キャビンから後ろのボディはリアにかけて長い裾を引いたフーパー(コーチワーク)調の古典的で優雅なスタイルです。車体寸法は5740 x 1970 x 1620mmとかなり大柄で、この種の公用車としての居住性は十分だったと思います。また直列6気筒4.2L (186HP) DOHCエンジン、3段自動変速機、最高速177km/hという性能は発表当時は十分高性能なものでした。

 この車は、知る人ぞ知るといったマイナーな車だったので、量産ミニカーでは今までモデル化されていませんでしたが、うれしいことに最近オックスフォードがモデル化してくれました。

daimler ds420      daimler ds420s

 

DAIMLER DS420 OXFORD製 1/43
左がわの画像はクリックすると紋章部分の拡大画像に変わります

 イギリス王室には3台のDS420があり、その内の一台がこの王室カラー(溜色)で塗装されていて、皇太后(エリザベス女王の母親)が使用されていたそうです。またこの車は屋根に御料車であることを示す青いマーカーランプと王室の紋章が付いています。ディムラーは準公用車扱いということでしたが、実際にはこのようにロールス ロイス御料車とほぼ同じ仕様の車が存在するのだということを今回初めて知りました。

 さてオックスフォードのミニカーは初めて購入しましたが、最近のミニカーは作っているところが同じなのでみな似たような出来映えです。このミニカーも特別に精密というわけではないですが、なかなか良くできています。紹介したのは御料車のモデルですが、DS420の一般仕様と霊柩車仕様もオックスフォードがモデル化しています。

   

最新の御料車 ベントレー ステート リムジン

 国産のロールス ロイスが消滅してしまった現在の御料車は何かといいますとベントレーのリムジーンです。2002年にベントレー ステート リムジンがエリザベス女王の即位50周年のお祝いとしてイギリス自動車業者協会から贈呈されています。ロールス ロイスの会社を引き継いだのはVWで現在ベントレー モーターズ社と改名されていてベントレーを販売しています。この会社がロールス ロイスのサービスを引き継いでいると思われますので、ベントレーが御料車として採用されたのでしょう。ちなみにBMWが設立したロールス ロイス モーターカーズ社は2003年からファントムという名前の新型車を発売しています。この車はデザインがやや奇抜でおよそ御料車には向いてないと思いますのでベントレーを選んで正解かなと思います。

 このベントレー ステート リムジンは女王の為に2台作られたそうです。ベースとなったのはアルナージで、V型8気筒 6.75Lのツインターボ(400HP)エンジンを搭載し最高速度は130mph(208km/h)ということです。ボディは特注でアルナージよりかなり大きく、当然のことながらボディは装甲が施されています。地雷に耐える床、対戦車ロケット砲に耐えるガラス、毒ガス攻撃に対応できる気密構造、ランフラット タイヤなどの重装備で重量は4tを越えています。なおドアは高級車に多い観音開きのタイプです。

 2007年になってこの車のミニカーが出てきました。メーカーは分かりませんが、ホワイトメタル製の少量生産品です。このような高級車のリムジーンをモデル化しているメーカーで「CMR PRECISION MODELS」というブランドがありますが、そこの製品かもしれません。

bentley state limousine 1      bentley state limousine 2
  BENTLEY STATE lLIMOUSINE 2002 1/43
左がわの画像はクリックすると後方からの画像に変わります
 ミニカーは手作りの少量生産品ということで、結構値段が張りますが、値段に見合った素晴らしい出来映えです。実車の全長が大体6.2mですので、14.5cmもある大きなミニカーです。実車を見たわけではありませんが、画像で見た御料車のイメージが良く再現されていると思います。ルーフの部分だけ黒く塗られたツートンの塗装、ベルトラインに走る赤いストライプなど塗装も実車に忠実です。またルーフには王室の紋章が取り付けられていますし、エリザベス女王と運転手のフィギュアもちゃんと付いています。フロント グリルのマスコットはそっけない円柱状形の物が付いていますが、これは女王が乗車されていない場合のマスコット(ダミー?)で、本来は上のファントム IVの御料車で説明した「龍を退治するセント ジョージ」のマスコットが付くのが正しいはずです。(本来のマスコットが付いている実車の画像がありますので間違いないと思いますが)
bentley state limousine 3
女王のフィギュア ルーフの紋章 フロント グリル
画像をクリックするとフロント グリルの画像にかわります
 新旧の御料車を並べてみました。両車の間には実車もミニカーも約40年以上の時代の流れがあります。どちらも全長が6mを越える巨大な車で、並の車にはない威厳と迫力があります。ベントレーのほうが車高が低いですが、それでも1.8m程の高さです。マウスカーソルを画像の上にのせると真上から見た画像に変わりますので、その画像で全長、全幅の違いを見てください。ベントレーの方が全長が長く幅はほぼ同じであることが分かると思います。細かいことをいうと、実車のベントレー御料車の全幅はアルナージよりも15cmほど広いとWEBのページに書かれていますので、大体2.08mということになりロールス ロイス御料車よりも少しだけ幅が広いことになります。(ロールス ロイス御料車のミニカーの縮尺は1/42ですので、その分だけ少し大きくなっています。)
2 royal cars
新旧の御料車 1960 2002
 

その他VIP車 王室関連車両

以下は御料車ではありませんが、最近のロールス ロイスやベントレー、王室に関連した車について紹介致します。

 

 BMW傘下となったロールス ロイスの新型車はファントムという名前で登場し、そのオープンモデルがこのファントム ドロップヘッドクーペです。ドロップヘッドクーペとはイギリス式表現でオープンカーを意味します。V型12気筒6.8L(460HP)エンジンを搭載し、BMW設計のメカですからスポーティさも並みの車以上でしょう。年間200台しか生産しないという特別な高級車です。

 ミニカーはミニチャンプス製で、意外なことにミニチャンプスではこれが初のロールス ロイスのモデルです。ロールス ロイスの伝統を残したフロント・グリル、2灯式ヘッドライト、黒と銀のツートンカラー、豪華な内装などこの車の特徴的な部分がよく再現されています。

rr phantom drophead
ROLLS ROYCE PHANTOM DROPHEAD COUPE 2007
MINICHAMPS製 1/43 (画像クリックで内装を表示)
   
 BMW製エンジンを搭載したロールス ロイス シルバーセラフ リムジーンのミニカーです。ロールス ロイスの100周年記念ということで2004年に限定品として販売されたものです。製造したメーカーはどこにも記載されていないので不明ですが、前輪がステアするように出来ていることからオートアート系の物ではないかと思います。ストレッチド リムジーンとなっていますので全長が14cm以上もあり、最新のロールス ロイスのミニカーとして貴重なモデルです。
rr silver seraph limo
ROLLS ROYCE SILVER SERAPH LIMOUSINE 1/43
 
 
 ベントレーのアルナージ Tのミニカーです。ベントレーはロールス ロイスに合併されたあとロールス ロイスのスポーティ版として存続してきましたので、この車もスポーティさを売り物とした味付けになっています。なお御料車はさすがにこんなスポーティな感じではなく伝統的なスタイルになっています。(ただロールス ロイスのような重厚さはすこし足りないですが) かつてイギリスのスポーツカーとして名を馳せたベントレーがロールス ロイスに代わって御料車を担当するのは結構なことですが、VWの傘下というのがちょっと寂しいです。
bentley armage
BENTLEY ARNAGE T MINICHAMPS製 1/43
 
 ジャガーに吸収合併されたあとのディムラーの代表的なモデルのソブリンです。車のベースはジャガーXJでフロントグリル上部にフルート(縦溝)が追加されていて、ジャガーより高級なディムラーとしています。なおジャガーXJ12(12気筒エンジン)のディムラー版はダブル シックスと名付けられています。

 ミニカーは60年代のイギリス車を昔のコーギー風に仕上げているバンガーズ製です。ヘッドライトにダイヤカット ガラスを使う手法はコーギー好きの私にとってはとてもなつかしい感じがします。最近のリアルな造形もいいですが、このライトがキラッと光る感じは捨てがたい魅力ですね。

daimler sovereign 1969

 

DAIMLER SOVEREIGN 1969 VAIGUARDS製 1/43
画像をクリックすると正面からの画像に変わります
 
 イギリスの王室の面々は自動車好きでそれぞれがプライベートカーを持っていて、自分で運転されるそうです。最近はテロなどの問題が有るのでどうだか分かりませんが、1970年代にはなんとエリザベス女王ご自身が運転されて、ウインザー城下に出かけておられたそうです。その女王が愛用されていた車が、このヴォクスホール クレスタ PA型 フリアリー エステートです。 女王が運転されている写真

 

 ヴォクスホールはGMの子会社ですが、その影響でこの車はアメリカ車的なアクの強いデザインで、あまりイギリスの高級車といった感じがしません。もちろんヴォクスホールの最上級車で、なおかつ特注仕様のエステートですから並みの車ではありませんが。なお後継車の1965年に登場したPC型のクレスタ フリアリー エステートを女王が運転されている写真もありますので、女王はよほどこの車がお気に入りだったようです。ちなみにその車のカラーリングも濃い緑色です。
vauxhall cresta
VAUXHALL CRESTA PA FRIARY ESTATE 1961 OXFORD製 1/43
画像をクリックすると後方からの画像に変わります
   

 バンデン プラ プリンセスはちいさなロールス ロイスと呼ばれた車で、王室の愛用車として知られています。ミニをサイズアップしたADO16シリーズのオースチン版でADO16シリーズの最高級車です。なおバンデン プラとは名門のコーチビルダーの名前で当時のオースチンの上級ブランド名として使われていました。

 

 ミニカーはADO16シリーズを何車種もモデル化しているビテス製です。このバンデン プラ プリンセスはウオールナット仕上げの内装や後席手前のテーブルにのせられたワイングラスなどが再現されていていかにもそれらしい雰囲気を出している楽しいミニカーです。

vanden plas 1967
VANDEN PLAS PRINCESS 1967 VITESSE製 1/43
画像をクリックすると側面からの拡大画像に変わります
 

 レンジローバーはランドローバーで培ったオフロードカー技術に、ローバー高級車の味付けを行った全く新しい概念の高級車でした。シンプルな外観のボディにV型8気筒3.5L(128HP)エンジンを搭載したフルタイムの4WD車でした。発売されるや高い評価を得て、「4WDのロールスロイス」としてイギリス上流階級のステータスシンボルとなりました。イギリス王室のメンバーにとっても、狩猟やアウトドア レジャーの際には必須の車でした。


 画像のレンジローバーは初代の型ですが、エジンバラ公が所有されていました。(今は最新型をお持ちでしょうが) エジンバラ公の愛車としては高級車のラゴンダ 3Lリライアント シミター(Triplex Scimitar GTS)などが知られていますが、ちょっと個性的なスポーツカーがお好きなようです。

range rover 1971
RANGE ROVER 1971 DINKY製 1/43
画像をクリックすると側面からの拡大画像に変わります
 
以上でイギリスのVIP CARの紹介を終わります。 

2006/10/28 作成
2008/02/26 ベントレー ステート リムジンの画像を追加
2009/08/13 ディムラーDS420を追加
2010/04/30 ロールス ロイス ファントム ドロップヘッドクーペ追加

2011/09/27 ヴォクスホール クレスタを追加

2012/03/04 ディムラーダブル シックスの画像を追加

イギリスの御料車関係サイト(急に音楽が鳴りはじめますのでご注意!!)
http://www.darkforce.com/royce/royal.htm