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主な材質(製造方法)の概要 |
子供の玩具としてのミニカーも最近のコレクター向けのミニカーも基本的には工業製品で、量産して販売することを目的としています。したがって量産する場合には、その製品(量、精度、コスト)に応じて適切な製造方法が選択されます。(工芸品の類として一品製作される車の模型もありますが、このような模型は一般的なミニカーの定義からは外れます)
初期のミニカーはダイキャスト製法で作られた物が多いですが、これは大量生産でコストダウンし大量に販売することを目的としていたからです。1960年代頃のミニカーの生産台数は1車種で数10万台から100万台程度でしたので、ダイキャスト製法が一番適していた訳です。この様な大量生産に使われるダイキャスト製法の金型は非常に精密で高価なので、生産台数が少ないと1台当たりの原価が高くなり販売価格が高くなってしまいます。(例えば金型に300万円がかかる場合、10万台生産すれば一台当たり30円で済みますが1千台しか生産しなければ一台当たりが3000円になってしまいます) そんなわけで大量に販売されないマニア向けの物は、高価な金型を必要としないホワイトメタルを材料とする鋳造製法などで作られていました。
なお現在のミニカーではウインドスクリーンや室内の造形などにプラスチックのパーツがたくさん使われています。また精密なモデルでは金属の加工材やガラスなども使われていますので、単純に一つの素材からできているミニカーはありません。以下にミニカーのボディ本体の材質と製造方法についてその概要、長所、短所をまとめました。 |
材質(製法) |
概要、製造方法、長所、短所 |
ブランド |
ダイキャスト |
概要 ダイキャスト材は大量生産するミニカーでは最も一般的な材質です。昔から使われてきた為、製作のノウハウが蓄積されていて一番安心できる材質です。 製造方法 非鉄合金を溶融し、精密な金型に高い圧力をかけて流し込み製品を作ります。使われる非鉄合金にはアルミ合金、亜鉛合金、マグネシウム合金、銅合金、鉛合金、錫合金などがあります。ミニカーではかつては亜鉛合金が主として使われていましたが、現在はアルミ合金に移行しているようです。 長所 精度の高い製品を大量生産でき、低コスト化が可能です。 金属ですので機械的強度があり丈夫で、腐食さえしなければ長期保存による経年変化も少ないです。 適度な重量感があります。 短所 金型製作にコストがかかりますので、少量生産には向きません。プラスチックほどは細かい造形が出来ません。金属なので錆びたり腐食したりします。 |
ミニチャンプス、イクソなどの大手メーカー |
ホワイトメタル |
概要 ホワイトメタルとは鉛と錫の合金で白い色をしています。少量生産のミニカーで使用される材質です。ダイキャストと同様に比較的昔から使われてきた為、安心できる材質です。非常に重く重量感のあるミニカーとなります。 製造方法 シリコンゴムで作った型に、鉛と錫の合金を溶融して流し込み製品を作ります。 長所 コストのかかる精密な金型が必要有りません。材質が柔らかいので後加工が容易です。 短所 大量生産ができないので、コストが高くなります。あまり精密な鋳造が出来ません。 |
ブルックリン、ウエスタンモデルなど |
アンチモニー
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概要 アンチモニー(合金)とは鉛とアンチモンの合金で、日本独自の材料のようです。少量生産のミニカーで使用される材質です。国内では比較的昔から使われてきた為、安心できる材質です。非常に重く重量感のあるミニカーとなります。 製造方法 真鍮で作った金型に、溶融したアンチモニーを流し込み製品を作ります。 長所 ダイキャストより安いコストで金型が作れ、精密な鋳造が出来ます。材質が柔らかいので後加工が容易です。 短所 材料が特殊なことと大量生産ができないので、コストが高くなります。材質が柔らかいので、外部からの力で容易に変形します。 |
昔の大盛屋、初期ダイヤペット、アンチモニーコレクションなど |
コールド キャスト |
概要 |
アオシマの80sコレクション・シリーズ、アドウイングのバスなど |
レジン キャスト |
概要 |
スパーク、ビザール、アイドロンなど |
プラスチック |
概要 コールドキャストやレジンキャストとは異なり、プラスチックをダイキャスト製法の金型で鋳造します。 昔は廉価版のミニカーでしたが、最近は1/87以下で出来の良い小スケール ミニカーとして定着しつつあります。 製造方法 熱可塑性樹脂をダイキャストと同じ金型に流し込み製品を作ります。熱可塑性樹脂としてはABS樹脂などが使われます。 長所 金属よりも精度の高い鋳造ができます。精度の高い製品を低コストで大量生産することが出来ます。 塗装しなくても色を付けることができます。 短所 金型製作にコストがかかりますので、少量生産には向きません。 合成樹脂なので経年変化で変形する可能性があります。 軽いので重量感に欠けます。塗装しない場合の表面の質感は安っぽくなります。 |
昔のノレブ、ファラー、ヘルパ、ヴィーキングなど |
レジン製ミニカーとダイキャスト製ミニカーはどちらが精密か?最近このような質問をWEB上のQ&Aサイトで良く見かけます。この質問とその解答のほとんどが要領を得ていないと考えるので、当サイト流の見解を示します。 まず最初に言っておきたいのが、精密なミニカーと良くできたミニカーは別物だということです。精密なミニカーとは細かな構成部品を実車同様に組み合わせて作られているミニカーのことで、究極的に精密なミニカーの代表例はCMCやEXOTOの超精密モデル(ダイキャスト製)です。そもそもエンジンやシャーシなどのメカ部分を再現していないミニカーを、精密なミニカーと表現することはおかしいです。それならばほとんどのミニカーが精密なミニカーになってしまいます。(オートアートの1/18などのようにメカ部分を再現しているミニカーを精密なミニカーと呼ぶのです) 精密なミニカーでも全体的に出来の悪いミニカーもありますので、「精密=出来が良い」ではありません。したがってどちらが精密かということではなく、どちらが出来の良いミニカーかということで考えます。
次に指摘したいのは、ミニカーの出来ばえは材質で決まる訳ではないので、この質問自体がおかしいことです。どのくらいのコストでどのようなユーザー向けのミニカーをつくるのかに応じて、最適な材質が選択されるのであって、材質とミニカーの出来ばえは別物です。それではミニカーの出来ばえは何できまるのかというとそれは基本的にミニカーの型をつくる型職人の技術(センス)とそれを製品化する工場の技術レベルで決まります。型職人の技術の良し悪しはおおざっぱにいうと経験がものをいうので、ベテランの型職人がいる老舗ブランドのミニカーのほうが一般的には出来が良いと考えられます。ただしベテランの型職人も得手不得手があるので、いつも出来が良いとはかぎりませんが。。。
またレジン製ミニカーのWEBサイトなどで良く書かれていることですが、レジン製は後加工ができるのでよりリアルな再現ができるというのもおかしな話です。ダイキャスト製でもホワイトメタル製でもアンチモニー製でもやる気になれば後加工できます。コストがかかる手作業での後加工(というより手直しに近い)を行えば、リアルな再現ができるというのはあたりまえの話で、これは材質的に多少やりやすいとはいえレジン製に限った話ではありません。このレジン製ミニカーに限った話をするのであれば、少量生産のレジン製ミニカーで型を省略したことで起こるウインドスクリーンの問題を取り上げるべきでしょう。通常3次元的な形状を型で形成しているウインドスクリーンを、レジン製ミニカー(1/43サイズ)では平板な透明プラ材を使っていることが多いです。これがレジン製ミニカーに多いウインドスクリーンがはがれる不具合や、キャビン部分が平板な感じにみえる問題を起こしています。(屋根がないF1のミニカーではこれが問題にならないので、レジン製が多いのです。屋根がある乗用車ではかならず平板な感じがしますので、ウインドスクリーンだけは真空成型用の簡易型を使っている場合があります)
最近の新興ブランド(レジン製)でも出来が良いのがありますが、これには理由があります。それらのほとんどは人気の高い車種(ポルシェやスカイラインなど)で、これらの車種には出来の良いダイキャスト製ミニカーが既にあって、パクリとは言いませんが、お手本にして型をつくっていることはほぼ間違いないでしょう。実際に新興ブランドが独自に型をおこしたと思われるモデルは基本的なプロポーションが良くないものが見受けられ、オーバーフェンダーやシャコタン仕様にしているのはその辺をごまかしているのです。
という訳で、出来の良いミニカーを集めたいなら、自分の目で実物をみて選びなさいというのが結論です。ただこの手の質問をする人は、まだその見極めができないからこんな質問をしているのでしょう。私のミニカーコレクターとしての経験と私と同じコレクター仲間のコレクションを見てきた経験からアドバイスしますと、コレクションを本当に続けていきたいのなら、レジン製ミニカーをコレクションの主流にするのはおやめなさいと言っておきます。
ついでにもう一言 Q&Aサイトの回答ではいまにもダイキャスト製ミニカーがなくなるようなことを述べている方がいましたが、圧倒的な数を販売しているトミカがダイキャスト製であることをお忘れのようです。.将来的にもミニカーの主流はダイキャスト製です。F1のミニカーなど特定の分野ではレジン製が主流になりつつありますが、ミニカー全体で考えればダイキャスト製ミニカーが主流から外れることなどないでしょう。 以下2021年10月追加 以上の見解は5年ほど前に記載したものです。現在の状況は、私の見解通りダイキャスト製ミニカーがなくなることはなく、老舗ブランドは従来通りのダイキャスト製ミニカーが主流です。また最近増えてきた1/64のミニカーはほとんど全てがダイキャスト製です。またF1のミニカーではレジン製ミニカーが増えましたが、ダイキャスト製ミニカーも残っています。 |
2-3 ホイールの溶解
問題はこのリアリティ重視のホイールで起こりました。合成ゴムのタイヤには柔軟性や耐候性を改善する可塑剤という薬品(有機溶剤)が含まれています。この可塑剤はプラスチック(ABS樹脂等)を溶かす性質があります。ゴムがホイールを溶かすのには数ヶ月単位という時間が必要なので、新品のミニカーでは問題が発生せず、購入後かなり経ってから問題が起こるというやっかいな物でした。(プラスチック消しゴムがプラスチック製筆箱を溶かす現象と同じ) この問題は樹脂の種類によって程度の差はありましたが、スピードホイールを採用しなかったほとんど全てのメーカーで起こりました。特にひどかったのはサブロン、ドゥグー、ソリド(特定の期間)などでした。
代表的な症例として、サブロンのポルシェを紹介します。サブロン(ベルギー)は1970年頃にダイヤペットが代理店として輸入したブランドです。このブランドのミニカーは20種類ほどありますが、その全てでこの現象が発生します。症状としてはタイヤがホイールを溶かして、一体化してしまうという物です。これはどのような保管状態でも発生し、材質的な問題ですから防ぐ方法はありません。 サブロンの場合比較的安価なミニカーですし、防ぎようもないのであきらめるしかありませんでした。100%確実に発生しましたのでこの問題を広く認識させるきっかけになったという点では、ある意味で有意義なミニカーでした。 |
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ホイールの溶解例 1 サブロン ポルシェ 911 (マウスカーソルを画像に載せると拡大されます) |
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個人的にショックが大きかったのは、当時としては非常に精密で高価なミニカーであったドゥグーにもこの問題が発生していることを見つけたときでした。それは今から35年ほど前でしたが、精密な出来映えのホイールのほとんどにこの症状が出ていました。症状をそれ以上悪化させないよう、とりあえずホイールからタイヤを外して対処しました。ホイールとタイヤが完全にやられたミニカーは、形状の似たホイールを持つ他のミニカーから部品取りして交換することにしました。
ドゥグーの場合箱に入れて保管していると、症状の進行が遅い場合もあります。以下左の画像のフィアット F2は箱に入っていた状態では問題が無かったのですが、箱から出して飾ったおいたところ、約1年ほどでこの状態になってしましました。(加重がかかるタイヤ下部から溶解しています 多分箱のなかではタイヤに加重がかからないので、溶剤があまり染み出ないようです?) この問題はタイヤかホイールの材質を変えることで対処できるようです。右の画像は製造時期が新しい物で、この個体には問題は発生していません。見た目は同じですが、明らかに何らかの処置が行われたと考えられます。 |
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ホイールの溶解例 2 ドゥグー フィアット F2 |
ホイールの溶解例 2 ドゥグー フィアット F2 対策後 |
以下の画像はソリドのルノー14の例で、1977年に購入した物です。1975-78年頃に新規設計で生産されたソリドのミニカーにはこの問題が多く発生します。これに気づいたソリドは材質変更にて対策を行ったようで、1980年頃には問題は起こらなくなりました。右の画像は1980年に購入したルノー14ですが、問題は起こっていません。(個人的見解で根拠はありませんが、ホイールの材質が変更されているように思います) |
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ホイールの溶解例 3 ソリド ルノー14 |
ホイールの溶解例 3 ソリド ルノー14 対策後 |
この問題でミニカーコレクターが被った損失は多大なものでした。今なら製品の回収/交換などが行われてもおかしくないような問題でしたが、当時は単なる子供のおもちゃの問題ということでコレクターが泣き寝入りするだけでした。(ミニカーメーカーに多少のクレームがあったとは思いますが) |
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この問題を経験して学習したメーカーは同じ問題を起こさなくなりましたが、この問題を知らない最近の新興メーカーが似たような問題を起こしています。右の画像はミニチャンプスのボルボですが、台座に取り付けたままで長期間保存していたことで、タイヤと台座が溶着しています。この問題の原因も、タイヤに含まれる可塑剤による物です。ただこの問題は台座が溶けるだけで、ミニカーの側には問題が生じないのであまり深刻な問題ではありません。
この台座が溶ける問題はミニチャンプスに限らず多くのブランドで発生しています。対策としてはタイヤと台座が接触しないようにすることです。このほかにもホイールに施した塗装の有機溶剤でホイールが溶けるなど、有機溶剤が樹脂を溶かす問題は未だにたくさん発生しています。(この様に樹脂素材には問題が多いので、私はレジン製ミニカーが増えることを好ましく思いません) |
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台座の溶解例 ミニチャンプス ボルボ (マウスカーソルを画像に載せるとミニカーが外れます) |
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2-4 ホイールの錆び |
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ホイールの錆び例 ポリトーイ ポルシェ (マウスカーソルを画像に載せると拡大されます) |
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2-5 ホイールの割れ
これも基本的にはこれまでに紹介したホイールの溶解と同じ現象で、タイヤから出る溶剤のせいでホイールの樹脂が劣化し、車軸にかかる荷重でホイールが割れているのだと思います。したがって、ボディを浮かせてタイヤに加重を掛けないようにすればホイールの割れはある程度防止できると思われます。(ただしホイールの劣化(溶解)は少しづつ進行していきます、これは止められません) |
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ホイールの割れ例 ダイヤペット カローラ (マウスカーソルを画像に載せると拡大されます) |
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以下 ミニカーの材質2に続く | |