ミニチュアカー ミュージアム

ミニカーの材質と経年変化

ミニカーの材質と経年変化 [1] [2]

ミニカーの経年変化の実例と保管方法(手入れ方法)

3.ボディの変形

 ミニカーの経年変化で次に多いのが、ボディの変形です。ボディの変形はさまざまな要因で起こりますが、ほとんどが修復できませんので悲惨な結果をもたらします。

3-1 プラスチック素材の変形  まずはプラスチック素材の変形です。一般的に熱可塑性のプラスチックは経年変化で寸法が縮むようです。これは経年変化でプラスチック分子同士の結合が徐々に増え、分子間の距離が縮まっていくことが原因のようです。また成形時に発生した内部応力や外部からの応力でも、プラスチックは徐々に変形していきます。(クリープという現象で、応力によって伸びることもあります)

代表として1960-70年代頃に製作されたノレブのプラスチック製ミニカーの例を示します。ボディ全体がU字型に反っています。特にフロント・グリルは上を向いてしまっています。これはボディ全体が縮む際に面積の大きい上側がより多く縮むため、下側に開く形で全体が変形したものです。
この時代のノレブのプラスチック製ミニカーはほぼ100%の確率で変形します。私の保有している物も程度の差はありますが全てが変形しています。変形に気がついたのは、多分10年以上保管した後だと思います。(時間経過で徐々に変形していきます)
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プラスチック素材ボディの変形例 ノレブ ジャガー
 同じプラスチック素材の変形ですが、ウインドーなどの透明プラスチックが変形した例を示します。ノレブのダイキャスト製ミニカーのリア・ウインドーですが、全体が縮んでボディから外れてしまっています。(ノレブの例が続きますが、別にノレブだけがこうなるのではありませんので、誤解無きよう)

 この透明プラスチックに不具合が起こる場合は、寸法の変化が大きくまたこの様に黄ばんでしまうものが多いです。昔のミニカーでも透明プラスチックに変形が起こることはまれで、これは1970年代頃に製作されたミニカーの一部に起こる不具合です。したがってこれは材質もしくは材料の問題のようです。最近のミニカーでは適切な材質が使われているようでほとんど発生しません。
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透明プラ材の変形例 ノレブ シトロエン SM
 このようにプラスチック素材には程度の差はありますが、経年変化で変形する性質があります。したがってボディ全体をプラスチック素材で作ることは、長期保存することを考えると好ましくありません。(1/87ぐらいなら、サイズが小さいので問題は少ないですが) 最近1/43のレジン製のミニカーがやたらと増えてきましたが、10-20年後にはそれらのミニカーにボディの変形が発生することは覚悟しておく必要があります。

 

2023年2月追記 プラスチックにもエンジニアリング プラスチック(略称エンプラ)と呼ばれる金属的な強度を持つものがあります。この素材は歯車などの機構部材として使われており、耐久性があり劣化しにくいです。したがってプラスチックも種類によってはボディの材質として使えます。ABS樹脂はエンプラに分類される樹脂で、HERPAやWIKINGなどの1/87のプラスチック製ミニカーはABS樹脂製、最近オートアートが始めた樹脂成型ボディもABS樹脂です。なおレジン樹脂は簡易な型が使えることで選択されている樹脂ですから、エンプラのような耐久性はありません。そのレジン樹脂をボディに使っているスパークの初期モデルですが、現時点で購入から20年経過したものが2台あります。1台はボディの変形などは認識できませんでしたが、もう1台は底板とボディの間の隙間がわずかに大きくなっているようです。なおその後に購入したスパークのミニカーにはモールが剥がれるなど不具合が発生した物がいくつかあります。(レジン製ミニカーがダイキャスト製ミニカーより経年劣化しやすいことは間違いないです)

3-2 ダイキャスト素材の変形
 金属素材の場合通常はプラスチック素材のような変形はほとんど起こりません。ただし素材に問題がある場合、金属でも変形が起こります。まず昔からのコレクターにはよく知られているダイヤペットの変形例を示します。以下のグロリアのミニカーは初期のダイヤペット製で1960年代後半に作られたものです。アンチモニー製のボディは非常にきれいな状態なのですが、亜鉛ダイキャスト製の底板が大きく変形しています。このミニカーはただ飾ってあっただけなのに、いつの間にかこんな具合に変形してしまいました。アンチモニー製のボディが非常にきれいなだけに、この状態を見つけたときは大ショックでした。長い間この不可解な変形の原因は全く分かりませんでした。最近になってWEB上などで色々と調べた結果、この現象の名前と発生する理由が判明しました。


これは「結晶粒間腐食割れ」という現象で、鉛や錫などの不純物が規定よりも多い亜鉛合金に起こります。そのような亜鉛合金が湿った大気中に置かれると、結晶粒界に沿って内部に腐食(錆び)が進行し異常な膨張が起こり結晶が分解して崩壊するという現象です。以下のミニカーではこの現象が起きたために底板の寸法が伸び、元の位置に納まることが出来ず下側にせり出してしまった訳です。右側の画像では底板全体に細かなヒビ割れが発生していて崩壊寸前の状態になっているのが分かります。ようするに粗悪な亜鉛合金が使われたことが原因ですので、これと同じロットで作られた製品は全てこの問題が発生したはずです。

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ダイキャスト素材ボディの変形例1 ダイヤペット グロリア
 上記は底板の例でしたが、同じ問題がボディで起こった例を示します。以下のコスモも上記と同じ1960年代後半に作られたもので、ダイヤペットのダイキャスト製ミニカーとしては初期の物です。物の見事にボディ全体がやられています。なお同じミニカーをもう1台保有していますが、そちらにはこの問題は発生していません。どのくらいの確率なのかは分かりませんが、マニア仲間では有名な現象ですので結構起こるようです。なおこの問題は頻度こそ低くなりましたが、1980年代頃まで時々再発していました。(私の保有するミニカーで実際に起こっています)
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ダイキャスト素材ボディの変形例2 ダイヤペット コスモ
 以上ダイヤペットの例ばかりでしたが、この問題はダイヤペットだけに起こるわけではありません。ソリドやディンキーといった老舗ブランドのミニカーで経験したことはありませんが、2流のブランドではいくつか経験しました。下図はオランダのAHC DOORKEYブランドのミニカーです。左右のドアにヒビが入り、変形しています。これも上述した亜鉛合金の「結晶粒間腐食割れ」の症状で、ドアが元の大きさより大きくなっています。ドア以外の車体部分には異常が見られないので、ドアの鋳造に使われた亜鉛合金だけ不純物が多かったのでしょう。

 

 購入した当時(1994年)はこのような状態になることなど全く予想できないものでした。箱に入れたまま保管していたのですが、最近になって写真撮影のため取り出したところ、この様な状態であることが判明しました。なお同時に購入した5ドア仕様のマイクラには問題が無いので、これも全てに起こるわけではありません。

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ダイキャスト素材ボディの変形例3 AHC マイクラ 3ドア
 以上かなりひどい変形例を紹介しましたが、1960-70年代頃に製作された亜鉛合金製のミニカーにはボディ全体が少し湾曲したような変形をするものも見られます。これも同じ原因ながら程度が軽いものと思われます。なお最近のダイキャスト素材は亜鉛合金からアルミ合金に移行していることや品質管理の向上で、上述したような問題はほとんど発生しないようです。(個人的にも最近は経験していません)
3-3 ホワイトメタル素材の変形
 亜鉛合金素材と同じような不具合はホワイトメタル素材にも発生します。多分原因は亜鉛合金と同じようなものだと思いますが、私の保有するホワイトメタル製のミニカーの一部に発生しました。このミニカーの悲惨な状態を見てから、私はこの種のホワイトメタル製ミニカーをほとんど買わなくなりました。

 

このフェラーリ(IDEA3製)は1984年頃に購入しました。当時は程度の良いフェラーリのモデルがなかったので、4000円ほどとかなり高い値段でしたが思い切って買いました。またホワイトメタル製のミニカーとしても初めて購入した物でした。購入後は箱から出して、ディスプレイケースに並べていました。約10年ほど経った頃、この惨状に気づきました。ボディ全体に細かいヒビが入り、ボディがでこぼこになり、フロントピラーが切れています。最初は塗装が劣化したのかと思ったのですが、よく見るとボディが変形していました。

 

 上述した亜鉛合金ほど変形が大きくはありませんが、全体的に変形しているのでとても見るには耐えないものとなっています。なお同時に購入した別のフェラーリには全く問題が無い物もありますので、これも全てに起こるということでもないようです。(ただ一つでもこうなると、ブランドに対する信頼はなくなりますが)

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ホワイトメタル素材ボディの変形例 IDEA3 フェラーリ 250

4.外観(塗装、デカール、メッキなど)の劣化

 次に紹介するのは塗装、デカール、メッキなどの外観(表面処理)の劣化です。これらの劣化は徐々に進んでいくことがほとんどなので、(新品の時と比較することが出来ないこともあって) あまり正確には認識できないこともあります。

 

4-1 塗装の劣化

 塗装とは材料の表面を塗料皮膜で覆う表面処理のことで、現在大量生産されるダイキャスト製ミニカーは吹付塗装された後で焼き付け処理がされています。なお昔のミニカーは焼き付け処理はされていなかったようで、現在でもプラスチック素材の物は焼き付け処理が出来ません。この塗装皮膜は紫外線や温湿度の変化によって必ず劣化していきます。(冷暗所で光(紫外線)にあてず空気にも触れさせなければかなり劣化を止められるはずですが。。。これは無理です)

 

 そんなわけでどんなミニカーでも塗装が劣化するので、古いミニカーの塗装が新品のような美しい状態ではないのは当たりまえです。ただしやはり保管状態によってその劣化具合は変わります。劣化する最大の要因は紫外線ですので、直射日光を当てないようにすることだけは心がけた方が良いです。あとはディスプレイ・ケースに入れるなどしてホコリを付けないことぐらいでしょうか。(ホコリがたまるとそのホコリが劣化を促進します) また極端な乾燥状態を防ぐために、ケース内に水を入れたコップを置いておくことも良いと言われています。(水を補給するのを忘れないようにする必要がありますが) なお実車のようにワックスを掛けるのは、作業自体が大変ですし、現在の細かいパーツで構成されているミニカーでは、その作業でミニカーを破損させる可能性が高いのでやらない方が無難だと思います。(1/18ぐらいのサイズなら作業はやりやすいですが。。。)

 

 上記のような点に注意して保管していれば、箱から出してケース内に並べておいたミニカーでも、思いの外きれいな塗装状態を維持することができます。もちろん箱に入れたままのほうがきれいですが、箱に入れっぱなしでは買った意味がありません。ただし長期保管でかなり見苦しい塗装状態になるミニカーもあります。以下にその具体例をお見せ致します。

 まずは私がコレクションを始めた当時のかなり古いミニカーです。1960年代に発売されたダイヤペットのベレットで、生産されてから50年以上経っています。子供の頃に買ってもらった物なので、多少遊んでいたこともあって、落下させたことによる屋根の変形やぶつけたことによる傷があります。直射日光にもかなり当たっているはずですので、この程度の塗装劣化はむしろ当然ですが、古いミニカーの塗装劣化のサンプルとしてお見せします。

メタリック塗装のかなりの部分がボディから剥離して、剥がれかかっています。それでも塗装自体にはまだ艶が残っていて、遠くからみるとあまり見苦しくありません。もし購入当初から大事に保管していれば、新品とあまり大差ない状態を維持していたと思われます。当時の塗装はかなりレベルが高かったのだと思います。
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塗装の劣化例1 ダイヤペット ベレット
 右の画像は1975年に購入したシュコーのBMWです。塗装の表面が細かい粒子状に荒れて、見苦しい状態になっています。当然ですが購入当時は普通の塗装状態でした。何故このようなことになったのかよく分かりませんが、塗装膜が吸湿して膨潤し、さらに金属部分も内部で錆びているように思われます。塗装前の下地処理が悪かったのかもしれません。

 

 当時のシュコーの塗装品質はあまり良くなくて、同社の同時期のミニカーには程度が軽いながら同様の塗装劣化がみられる物が何台かあります。また今でも塗装表面がべたつく感じがあります。アクリル塗装はべたつく場合があるそうですが、当時の塗装はアクリル塗装なのかもしれません。

schuco bmw 1 schuco bmw 2
塗装の劣化例2 シュコー BMW M1
  上記と同じような原因の塗装劣化で良く発生するのが、塗装のむくれ(膨れ)という状態です。これは塗装膜が膨張して盛り上がったもので、左の画像で赤丸で囲んだ部分に発生しています。原因としては塗装膜が水分や有機溶剤を吸湿して膨潤したもの、塗装の下の金属表面が錆びて塗装膜が膨潤したもの、塗装面に付着したホコリなどが吸湿して塗装膜を膨潤させたなどです。 湿度が高い環境が問題を起こすので、換気が悪い押し入れのなかで長期保存していると発生する可能性が高いようです。(画像のライレーも10年ほどそのような押し入れで保管されていました) 従ってこの現象に関しては箱から出してケースに並べておいた方が良いようです。ただ普通に保管する限りではこの問題は起きないようなので、この問題は本質的には製造品質の問題(塗装前の下地処理や塗装自体の問題)であると私は考えています。
vitesse reiley 1 vitesse reiley 2
塗装の劣化例3 ビテス ライレー
 なお最近のミニカーで上記のような問題があまり発生しない理由としては、塗装前の下地処理がしっかりされていることと、塗装に焼付け処理がされていることが挙げられます。(それだけ塗装が強固なのです) したがって塗装の焼付け処理ができないレジン等プラスチック材質のミニカーは、前述したボディ変形の問題に加えて塗装でも長期保存において問題が多い訳です。 (最近のミニカーでは15年以上の長期保存の結果はまだ出ていませんので、未知数ですが) 

 

 塗装の劣化には、上記のようなはっきり分かるもの以外に色の変化があります。比較的分かり易いのは黄ばみで、白いボディカラーが黄ばんでくる物です。原因は塗装の白色顔料成分の劣化です。幸いなことに私の保有するミニカーでは黄ばみがはっきり分かる具体例がありません。 (軽い黄ばみは、元の状態と比較しないと黄ばみと判断できません)

 

 黄ばみと同じようなものですが、退色の具体例をお見せします。右のベンツの車体はもともとは赤メタリック色でした。現在は金色に見えますが、ホイールに元の赤色がかすかに残っています。1979年に購入してから、徐々に退色していったようです。なおミニカーを入れてあった紙箱も保管中に退色しますので、紙箱も直射日光を避けて保管しましょう。

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塗装の劣化例4 ガマ ベンツ
4-2 デカールの劣化
 レーシングカーやラリーカーはボディに車番、スポンサーのステッカー、ブランド・ロゴなどが表示されていて、これらの派手なカラーリングが魅力であります。昔のミニカーではこれらは全てデカールで表現されていました。(また初期のミニカーでは添付されたデカールを自分で貼るのが普通でした) 現在ではミニカーの表面に直接印刷するタンポ印刷が開発されたので、デカールの代わりにタンポ印刷が使われるようになりました。ただタンポ印刷は色の数だけ印刷の型が必要なので、少量生産品でコストが合わない多色部分にはまだデカールが使われるようです。

 

 昔のミニカーに添付されていたのは「水転写デカール」と呼ばれる物で、水で濡らした後に台紙からスライドさせて貼付するものです。デカールを貼るのはそう難しくありませんが、上手に貼るのには多少の慣れが必要です。

 デカールもフィルムに印刷された塗料(インク)ですからも、塗装同様に劣化します。劣化の種類としては、変色(黄変も含む)、剥がれ、割れ(破損)などです。

 

 一番良く起こるのが、下の画像に見られるような黄変でしょう。デカールの透明フィルム部分が黄色に変色しています。またドアの部分はかなり剥がれています。30年以上も前に発売されたもので塩化ビニル系のフィルムだと思われますが、塩化ビニル系は紫外線によって劣化し黄ばみます。デカールの赤色もそれなりに色が変色しています。(元の色と比較できませんので、程度はわかりませんが、鮮やかさはないですね) 

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デカールの劣化例1 ソリド フェラーリ デイトナ
 上記の例はあまり程度の良くないデカールの例でしたので、少し別のデカールの例も挙げておきます。左の画像のポルシェ 935は同じソリド製ですが、数年後の物で少し程度の良いデカールが使われています。  デカール透明部に黄ばみはあまりないようです。また色の鮮やかさもまだ残っています。(こちらはデカールを貼ったあとで、すぐに箱にしまっていたのであまり紫外線にさらされていません) ただしよく見ると、端のあたりに部分的な剥がれが見られます。

 

 デカールの剥がれや割れは、デカールが乾燥すると発生します。従って保管の際に適度な湿度が保たれるような環境が望ましいのですが、最低限として直射日光や白熱灯の照射は避けましょう。  なお最近のデカールはタンポ印刷と区別が付かないほどレベルが上がり、昔の水転写デカールに比べると、耐久性なども良くなっていると思われます。
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デカールの劣化例2 ソリド ポルシェ 935
 なお昔の玩具的なミニカーには、デカールではなく紙やフィルム製のシールが使われています。(例えばディンキーのナンバープレートのシールや、ダイヤペットのレースカーの車番など) これらはデカールよりも劣化しやすく、糊が乾燥して剥がれることがあります。特にディンキーのナンバープレートは自然に剥がれてミニカーの下に落ちていることがありますので、無くさないように注意して下さい。剥がれたシールは紙用糊で貼り直すことが出来ます。
4-3 メッキ処理の劣化
 ミニカーのバンパーやグリルなどにメッキ処理をしたプラスチック製パーツが使われるようになったのは1960年頃からでした。それまでは銀色の塗装や金属製パーツで金属メッキ部分を表現していたのですが、このメッキされたプラスチック製パーツの採用はミニカーのリアリティを格段と向上させました。(ただ重厚な金属製パーツがなくなったのはやや残念な気もしますが)  このプラスチックのメッキ処理は正確にはメッキではなくて、アルミニウムの真空蒸着です。 真空蒸着とは真空中で金属を加熱蒸発させて、その蒸気を物体表面に薄膜状に付着させる表面処理です。このアルミ蒸着膜は数10nm(1nmは1000万分の1センチ)と非常に薄く 耐久性が無いため、トップコートというクリアー塗料ででコーティングされています。

 

 下の画像は1960年代後半に生産されたコーギーのMGBです。フロントバンパーとグリルにメッキしたプラスチック製パーツが使われています。グリルのメッキは残っていますが、バンパーの方はメッキが劣化して下地が見えています。よく見るとバンパーのオーバーライダー部分にはまだメッキが少し残っています。この当時のコーギーのメッキパーツはこのような状態になる物が多いです。また初期のポリトーイのメッキパーツも似たような状態になります。

 

 このメッキの劣化は剥がれたというよりも、磨り減ったような感じがします。最初からこうだった訳ではなかったと思うので、バンパー部分のメッキは主に擦れたことにより薄くなったと思われます。(ただそんなに触っていた訳でもないので、自然に剥がれた部分もあるのでしょう) 初期のメッキ技術が稚拙であったことや、表面を保護するトップコートが十分ではなかったことが原因でしょうか? ちなみに1970年代以降の物ではこのような感じの劣化は見られなくなりました。

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メッキパーツの劣化例1 コーギー MGB
 下の画像は1970年に生産されたディンキー(仏)のシトロエン 大統領車です。リアバンパーと一体化したリアエンドのプラスチックパーツのメッキが派手に剥がれています。このミニカーはケースに並べて保管していたのですが、購入してから20年ほど経ったときに、このような状態になっていることに気がつきました。(非常に好きなミニカーであったので大変ショックでした)

 

プラスチックのメッキ処理は金属メッキとは異なり表面に貼り付いているだけなので剥がれやすいのです。またプラスチックが温度変化で伸縮することも剥がれやすい原因です。このミニカーの場合、フロントのバンパーには問題がないので、何故ここだけが剥がれたのかよく分かりません。(ディンキーではこのようなメッキの剥がれは珍しい) メッキする前の下地処理が良くなかったのかもしれません。いずれにしろ当時のメッキ処理にはあまり信頼性がなかったようです。
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メッキパーツの劣化例2 ディンキー(仏) シトロエン大統領車
 上記と同じようなメッキ剥がれの具体例で、国産品をお見せします。下はトミカ ダンディーのVW ビートル(ロールス ロイス ルック)で、1978年に発売された物です。フロントバンパーのメッキが物の見事に全部剥がれています。あまりにきれいに剥がれているので、最近まで気がつきませんでしたが、もともとはボンネットのグリルのようにメッキされていました。

 

以上の具体例から分かるように、メッキが剥がれるのはバンパー部分が多いです。実際にここで示した物以外でも、ほとんどがバンパー部分のメッキ剥がれです。メッキは一部に傷が付くと、その傷の部分から剥離が始まるそうです。つまりどこかにぶつけて傷が付く可能性が高いバンパーはメッキ剥がれが多いわけです。従って傷を付けないようにするのがメッキ剥がれを防ぐ方法となります。(あまり触るなと言う結論ですが。。。)
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メッキパーツの劣化例3 トミカ ダンディー VW ビートル
 最近のミニカーでは上記のようなメッキの剥がれはほとんど経験していません。最近のミニカーは箱に入れっぱなしであまり触っていないからかもしれませんが、メッキ処理の技術が向上したとも考えられます。後者であることを願いますが。。。。

 

 余談ですが、最近の目新しい技術として真空蒸着メッキではなくメッキのような外観が得られる塗装があるようです。最近のイクソのミニカーで、ボディのクロームモール部分に施されている塗装がどうもそれのようです。あまり広い範囲にはつかえないようですが、この塗装技術が真空蒸着メッキの代わりに使えるようになれば面白いと思います。最近のミニカー製造には目新しい技術がないので、このような技術革新を私は期待しています。

5. その他の劣化 (パーツ破損、ギミック破損、箱破損)
5-1 パーツの破損
 1990年以前の昔のミニカーはほとんどが子供向けの玩具でしたから、乱暴な取り扱いをされても簡単には壊れないような設計がされていました。また外れたパーツを子供が飲み込むことが無いよう、小さなパーツ(ドアミラー、ワイパーなど)を付けないといった安全性の配慮もされていました。したがってビンテージミニカーでパーツが破損するようなことはあまりありませんでした。ただ上述したようなタイヤ/ホイールの経年劣化や、接着剤の経年劣化でヘッドライトのラインストーンや室内のプラスチックパーツが剥がれてきたり、電池を使った点灯ギミックの電気回路の接触不良といった問題などはありましたが、それらはどうしようもない経年劣化の類でした。

 それに対して最近の大人向けのミニカーには、触っただけで簡単に壊れてしまうパーツがたくさん付いています。またオートアート製の1/18のミニカーなどのようにドア/ボンネット開閉などの可動部があるミニカーも、可動部の機械的な強度が昔のミニカー(フランクリン ミント製の1/24ミニカーなど)に比べると極端に脆弱になっています。したがって、最近のミニカーはちょっとしたことでも簡単に壊れるので、取り扱いに注意が必要です。また可動部を動かす際にも、過度の負荷が掛からないように注意して操作する必要があります。(本来は多少の負荷が掛かっても壊れないような設計をするか、そのようなパーツを付けないようにするべきです。ただ最近のミニカーは箱の中に入れて飾っておくだけという前提で設計しているようなので、このような脆弱な設計がまかり通っているのです)

 特にレーシングカーの屋根上のアンテナや乗用車のドアミラー/ワイパーは触ると実に簡単に壊れます。アンテナは細すぎて修理が出来ませんし、ドアミラーなどの小物の補修はかなり面倒です。さらに厄介なのは触らなくても勝手に壊れていくパーツもあります。この代表的な物がレジン製ミニカーのウィンドー枠やモール類で、接着強度が不足する無理な取付をしている場合が多いので、経年劣化でボディがほんの少しだけ変形することで簡単にパーツが剥がれてきます。このようなことはダイキャスト製ミニカーではまず起こらないので、これは基本的にレジン製ミニカーの設計上の問題だと思います。高価なレジン製ミニカーが保管しているだけで壊れるといった苦い経験をしてきましたので、私はレジン製ミニカーは保管に堪えないものと思っています。 したがってミニカーのコレクションを長期間続けるつもりなら、レジン製ミニカーをコレクションのメインにしてはいけません。

5-2 箱の破損
 1960年代のビンテージ ミニカーは、ミニカーと同じサイズの紙箱に梱包されていました。その後同じ紙箱でも中身が見えるように、セロハン窓付きの紙箱が登場し、さらにその後はプラスチック台座に透明プラスチック製のカバーがついたディスプレイケースにミニカーを固定した現在のミニカーの標準的な梱包箱になりました。最近はこのディスプレイケースがやたらと大きくなって、見ばえの良いものになっていますが、個人的にはそのディスプレイケースにかけるコストをミニカー本体に掛けてほしいものだと思います。

 その梱包箱ですが、プレミアム価格が付くような価値のあるミニカーは、この箱があるのか無いのかでミニカー本体の評価が大きく変わります。もちろん箱がある方が良く、箱が綺麗であればあるほど評価が高くなります。(箱が無い物は、綺麗な箱のある物のおよそ半額以下に評価されます) ただしいくら保管状態が良くても、何十年も経過した紙箱が新品のような状態であるはずがありません。最近はリプロボックスと称する複製箱が販売されているので、あまりに箱が綺麗であるのは複製箱である場合が多いです。
 
 箱を破損させずに綺麗に保管するのは、ミニカー本体の場合と同じです。まずは直射日光は厳禁です。次にミニカーを入れた状態で何台かを保管する場合、あまり狭いところに押し込むなどして箱同士を接触させない方が良いです。これは私のようにたくさんの箱をまとめて保管している場合にきちきちに詰めて収納すると、箱どうしが擦れ合って箱が劣化することを経験しているから反省の為に記載しておきます。また箱だけにして小さく折りたたんだりすると、それもあまり良い結果となりませんし、紛失する可能性が高くなります。なお最初に買ってきたときに箱を開く際には、面倒でも定規のようなものを使って箱を丁寧に開くようにしてください。また箱に添付されていたクッション材も捨てないで再利用しましょう。 また箱に同梱されていた説明書や付属品(ユーザーが取り付ける予備パーツなど)も、箱と一緒に保存しておきましょう。
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