ミニチュアカー ミュージアム

VIP CAR VIPの車

ドイツのVIPカー

このぺーじについて

 このページにはナチス ドイツ時代に使われた車のミニカーが掲載されています。このページはそのようなミニカーと歴史的な事実を紹介しているだけで私にはそれ以上の他意はありません。またナチスの鍵十字ですが、ヨーロッパではこの鍵十字を使用することが禁止されていてオークションなどにミニカーが出品されている場合にもこの鍵十字の部分はモザイク処理がされています。あらぬ誤解を生じないようこのページにおいても鍵十字の部分はモザイク処理がしてあります。

皇帝ウイルヘルム2世のカイザーヴァーゲン

 ドイツのVIPカーというと自動車を発明した偉大な自動車メーカー ベンツが頭に浮かぶと思いますが、まさしくこのページはほとんどがそのベンツ車になっています。まず最初のミニカーは帝政ドイツ時代最後の皇帝ウイルヘルム2世の為に特注されたベンツ 770K カブリオレでカイザーヴァーゲン(皇帝の車)と呼ばれています。

 

 1930年に発表されたベンツの最上級車770K(グロッサー メルセデス)は国家元首などの公用車として開発された車で 7.7L スーパーチャージャー付き直列8気筒エンジン(200HP)を搭載し最高速160km/hを誇る車です。カイザーヴァーゲンは1931年に皇帝の注文で製造された770Kの特注品でドイツ式の分厚い幌を持ったキャブリオレとなっています。

 

 第一次大戦末期にドイツ革命が起きて皇帝は政治的な実権を失い1918年に退位しており、この車が製造された時期には既にオランダに亡命中であったのでその亡命先で使用したのでしょうか。ウィキペディアによると皇帝は車に乗ることは好きではなかった旨のことが書かれていますので実際にはあまり乗らなかったのかもしれません。ただボディカラーは皇帝の海軍びいきを反映してマリングレーとマリンブルー(幌)になっているとのことです。

benz770k kaiser 1931
MERCEDES-BENZ 770K KAISERWAGEN PMA製 1/24
 ミニカーはミニチャンプスで知られているPMA(Paul's Model Art)製でスケールが大きいので非常に細かいところまで再現されています。特に革張りのシートや内装、細かい造形のフロントグリルとベンツの青い紋章、その上に取り付けられたドイツ帝国紋章?のマスコットを画像で見てください。なお770Kは日本の宮内庁にも7台納入され天皇陛下の御料車として第二次大戦後も使用されていました。そちらもミニカーがありますので日本のVIPCARとして紹介する予定です。
benz770k kaiser 1931
KAISERWAGENの室内 及び フロントグリル部分
 

ナチス政権時代の高級官僚専用車

 第一次大戦に敗戦したドイツは共和国政に移行しますが、戦争賠償金の支払いなどで大規模なインフレが起こりその後の世界恐慌(1929年)により経済危機に陥ります。このような政府への不信を募らせた大衆の支持を受けて国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス党)が台頭し、1933年にナチス政権が成立し第二次世界大戦に進んでいきます。

 

 ナチス政権の首相兼大統領代行はヒットラーですが、この時代の車が以下のようなミニカーとなっています。最初の一台はヒットラーのパレード用に使われた黒塗りのカブリオレです。この車もベンツ 770Kですが1937年にシャーシを全面変更しエンジンを230HPに強化した2代目のグロッサー メルセデスです。この車は全部で88台しか作られておらずそのほとんどはナチの高官用として使われました。外観的には旧型に比べてフロントスクリーンやラジエータグリルが傾斜していてボディ全体がモダンになっています。ドイツ式のカブリオレとしても畳んだ幌が非常に分厚いですが、ボディ全体に防弾装甲が施されていて車重が4tを越えていたそうですから幌にも防弾装甲がされていたのかもしれません。

benz770k hittler 1942      benz770k hittler 1942
MERCEDES-BENZ 770K 1942年 RIO(M4)製 1/43
 
 上記ミニカーはリオがM4社のブランドに変わって2005年に発売した最新版で以前からあったリオのモデルにクロームモールなどを追加して細部がリファインされています。ここで紹介しているリオ製の2代目グロッサー メルセデスのミニカーは基本的にこれと同じものでボディカラーとフィギュアのバリエーションになります。これ以外にもフィギュアの付いていないセダンやカブリオレなどもあります。

 

 以下の画像は左側が上記の旧型のモデルで、右側は同じ車にムッソリーニが同乗しているものでミニカーの箱には「ASSE ROME-BERLINO 1936」と書かれてあります。「ASSE ROME-BERLINO」とは「ベルリン ローマ枢軸」という意味で1936年のドイツとイタリアの同盟関係のことです。ミニカーはその後にムッソリーニがドイツを訪問したときのパレードを再現しているモデルだと思います。

benz770k hittler 1942      benz770k asse rome-berlino

 

770K 1942年 RIO製 1/43
770K ASSE ROME-BERLINO RIO製 1/43
 
 以下の画像で左側ですが 「OPERAZIONE BARBAROSSA(ドイツのソビエト侵攻作戦の名前)」と箱に書かれていますのでその作戦の際に使われた車をモデルにしているのでしょう。メーカーはイタリアのUAN1というメーカーでリオのミニカーを使って軍用モデルを製作しているようです。その会社のWEB上のカタログによると後席に乗っているのはヒットラーと司令官とのことです。
右側はアフリカ戦線の軍用モデルです。箱には「DESERT FOX」と書かれていますのでこちらの後席に乗っているのは「砂漠の狐」と呼ばれたロンメル将軍です。グロッサー メルセデスのような超高級車が実際にその戦線で使用されたかどうかは?ですが。
benz770k barbarossa1941      benz770k desert fox
770K OPERAZIONE BARBAROSSA 1941年 U.A.N.1製 1/43
770K DESERT FOX RIO(MINI MINIERA)製 1/43
   

 こちらはゲーリング元帥のフィギュアが付いた白いグローサー メルセデスです。ミニカーの箱にはゲーリング元帥がパレードしている実車の写真が付いています。ナチスの高官のパレードではその殆どが黒いグローサー メルセデスを用いていたのに、ゲーリング元帥だけはベンツよりもホルヒのほうが好みであったとのことで、白いホルヒのプルマン カブリオレを使っていたとのことです。特注のグローサー メルセデスも使っていたとのことですので、たぶんその車をモデルにしているのでしょう。

 

 ミニカーはボディカラーを変えてフィギュアを付けただけで、箱についている実車の画像とはライセンスナンバーなどの細部が違っています。カラーリングもちょっと違うような感じがします。

benz770 goering 1938
770K VIENNA 1938年 U.A.N.1製 1/43
 
 ベンツばかりを紹介しましたが、当時のドイツの高級車にはマイバッハとホルヒがありました。どちらも元々はベンツの技術者であったヴィルヘルム マイバッハとアウグスト ホルヒがベンツを退社して創立したメーカーです。マイバッハについてはよく分かりませんが、ホルヒはナチスの公用車として使用されていました。(ナチスが使っていたという悪いイメージの為か戦後ホルヒの名前が復活することはありませんでしたが、マイバッハはベンツの最上級ブランドとして復活しています)

 

 以下の画像で左側が、マイバッハの代表的なモデル ツェッペリンで当時はグローサー メルセデスと同格の超高級車でした。マイバッハは当時の大型飛行船ツェッペリン号にV型12気筒エンジンを供給したことで知られており、この車の名前はそれにちなんだものでこの車もそのV型12気筒8Lエンジンを搭載していました。右側はホルヒのスポーツ カブリオレでこちらは直列8気筒5Lエンジンを搭載しています。ボディカラーも関係するのでしょうがマイバッハ、ホルヒとも威圧的な感じはベンツとあまり変わりません。ただホルヒはこのようなスポーティなボディのモデルが多くベンツよりも価格的が安く少しだけパーソナルな車だったようです。

maybach 1932      horch 853a 1938
MAYBACH DS8 ZEPPELIN 1932年
MINICHAMPS製 1/43
HORCH 853A CABRIOLET 1938年
MINICHAMPS製 1/43

 

戦後の首相公用車

 第二次大戦後ドイツは東西に分断されます。以下は西ドイツ(ドイツ連邦共和国)におけるVIP車の歴史となります。

 敗戦から6年たった1951年のフランクフルト ショーでベンツは戦後型の高級車300を発表します。300は6気筒3L 115HPのエンジンでパワー的には戦前のグロッサー メルセデスにはとても及ばないものでしたが、近代的なボディデザインゆえに室内は高級車として十分な大きさで軽量なボディを160km/hまで引っ張る性能がありました。1956年には国家元首クラスのパレード用としてホイールベースを延長した特注ボディのカブリオレ Dが発表されてローマ教皇庁などに納められています。このあたりからベンツのVIPCARへの復帰がはじまります。

 

 この300カブリオレ Dのミニカーを紹介します。アメリカのケネディ大統領が西ドイツを訪問したときのパレードを再現したモデルです。青い服を着ているのがケネディ大統領でもう一人はアデナウアー首相です。当時の写真を探してみたところ確かにこのミニカーと同じ車でパレードしている写真がありました。ただ当時の写真としてはこの車ではなくUSAのページで紹介したケネディカーに両者が乗っている写真の方が多かったですが。(アメリカ大統領は大統領専用車を外遊先に持っていくのです)

benz300l kennedy-adnauer 1963      benz300l kennedy-adnauer 1963
MERCEDES-BENZ 300 LIMOUSINE KENNEDY-ADENAUER 1963年 リオ製 1/43
 
 300は1957年に燃料噴射装置でエンジンを160HPに強化しボディを大型化するなどの変更が行われ300Dに変わります。デザイン的には当時はやりのスタイルを取り入れ屋根がセンターピラーのない4ドアハードトップ形式で、リアフェンダー後端がテールフィン状になっています。300Dは1962年まで作られその2シータ版の300Sは高級パーソナルカーとして富裕層に愛用されています。

 以下は300Dのミニカーです。左側は西ドイツの初代首相アデナウアーの愛用車で1959年式300Dです。リオのカタログ上ではこの車は1951年と記載されていますがこれは間違いのようです。右側は同じ300Dのカブリオレです。

benz300d 1959      benz300d 1958
 MERCEDES-BENZ 300D “ADENAUER”
1959年 リオ製 1/43
MERCEDES-BENZ 300D CABRIOLET
1958年 リオ製 1/43
 
 1963年には戦前のグロッサー メルセデスの復活といえるベンツ600が発表されます。600には6座リムジーネと8座プルマンの2タイプがあり、全長は5.5mと6.2mでプルマンは当時最大の乗用車でした。軽く2tを超える大きく重いボディを車高調整装置付きのエアサスペンションで支えV8 6.3L燃料噴射300HPエンジンで最高時速200km/hまで引っ張ります。最高速度としては当時のポルシェ356Cと同等ですから!!です。600はまだ速度制限のなかったアウトバーンを突っ走るビジネス超特急でもあったわけです。もちろんVIPカーに必要な豪華な装備も前後独立エアコン、ソニーのTVセット、電話(40年も前ですから特注の自動車電話でしょう)、バーカウンターなど至れり尽くせりです。またトランク内のスペアタイヤが油圧でせり出してくる仕掛けもあったそうです。600は1981年まで18年間生産され総生産台数はリムジーネ、プルマンあわせて2700台ほどでした。

 

 600のミニカーはいくつかありますが、あまりモデル化されていないリムジーネとしてはガマのものがあります。1/45と少し小振りですが古いミニカーとしては上出来の部類と思います。(2006年にイクソ、オートアートからリムジーネとプルマンが出ました) プルマンにはディンキーの傑作があります。ディンキーらしい無骨なしっかりした作りで、1/43ですので140mmを越える大きさがあり当時のミニカーとしても大きさでは実車同様別格のミニカーでした。ドアなどが全て開閉するギミックがついていてビンテージミニカーとしてとても素晴らしいものです。(画像をクリックするとギミックが動作します)

benz600 limousine 1965      benz600 pullman 1963
MERCEDES-BENZ 600 PULLMAN LIMOUSINE 1965年
GAMA製 1/45
MERCEDES-BENZ 600 PULLMAN LIMOUSINE 1963年
DINKY製 1/43
 
 スケールモデル的な観点から見るとプルマンの決定版はビテスのものでしょう。左側は600プルマンで後席2列が向かい合わせとなったタイプです。右側は後席がオープンとなっているランドレータイプで、トランクの上についているのはTVか電話のアンテナだと思います。
benz600 pullman 1965      benz600 landaulet 1965
MERCEDES-BENZ 600 PULLMAN LIMOUSINE 1965年
VITESSE製 1/43
MERCEDES-BENZ 600 LANDAULET 1965年
VITESSE製 1/43
 

歴代首相 公用車

 さて旧西ドイツは正式にはドイツ連邦共和国といって連邦大統領がいるのですが、国家元首としてのその地位は儀礼的なものだそうです。大統領専用車も多分あるのでしょうが、その車は情報がないので分かりません。(多分ベンツでしょうけど) 実権のある元首は連邦首相で、歴代の首相についてはミニチャンプスがその公用車をフィギュアが付いた政治リーダーシリーズ(Political Reader Series)としてミニカーにしています。

 

 まず左側が初代首相アデナウアーから数えて4代目のブラント首相(1969~1974年)の300SELです。この300SEL 6.3はなんと600の6.3Lエンジンを搭載した特別な300SELです。背景に本人の写真が写っていますがフィギュアはそこそこ似ています。丸いライトのクラシックな感じのベンツが時代を良く表しています。

 次に右側が5代目のシュミット首相(1974~1982年)の350SELです。当時350SELよりも大きい450SELがあったはずですが、シュミット首相は350SELを使っていたようです。またフィギュアは運転手のような帽子をかぶっていますのでまるで専属運転手が暇つぶししているような感じに見えます。シュミット首相を画像検索してみましたが、このフィギュアはいまひとつ似ていないように思います。

benz300sel brandt 1970      benz350sel schmidt 1974
MERCEDES-BENZ 300SEL 6.3
BUNDESKANZLER WILLY BRANDT 1970年
MINICHAMPS製 1/43
MERCEDES-BENZ 350SEL HELMUT SCHMIDT 1974年
MINICHAMPS製 1/43
 

 最後は6代目コール首相(1982~98年)の500SELです。この車ももちろん当時のベンツの最上級車で1985年にエンジンが大きくなり560SELに変更される前のモデルです。背景の写真の左後部座席に乗り込もうとしているのがコール首相でこの画像では小さくてほとんど分からないと思いますが、フィギュアはなかなかよく似ています。

 

 さてこの3台は全てSELですが、SEとは現在のSクラスのことでLはロング ホイールベース仕様を示します。ようするに600のようなVIP専用車を除けば一番高級なクラスのお抱え運転手仕様ということです。(ただ首相の公用車ということで装甲?などの特注仕様となっているとは思いますが)

benz500sel kohl 1985
MERCEDES-BENZ 500SEL Dr. HELMUT KOHL 1985年
MINICHAMPS製 1/43
 
 コール首相の次はシュレーダ首相(1998~2005年)でした。この首相は出身がVW本社があるニーダーザクセン州であったことから首相公用車を(一時的に?)VW フェートンに切り替えたようです。このことはベンツに相当のショックをあたえました。以下の左側の車がそれで、同じミニチャンプスの政治リーダーシリーズのミニカーです。W12とは12気筒エンジン(6L)を搭載していることを示します。ただ2000年から2005年の間は装甲を施したベンツ Sクラスも首相公用車として使われていたようです。右側がその頃のベンツS500です。
vw phaeton 2002.      benz s500 1998
 VW PHAETON W12 2002年 MINICHAMPS製 1/43
MERCEDES-BENZ S500 1998年 MAISTO製 1/43
 

最新の首相公用車

 現在の首相はドイツ初の女性首相のメルケル首相ですが、ドイツの株式情報WEBページに載っていたコラムによると、この首相は公用車をアウディに切り替えることを考えているそうです。本当かどうかは定かではありませんが、もしそうなったらクライスラーと合併してから絶対的な権威が低下気味のベンツにとってまたまた打撃となることでしょう。(そうならないことを個人的には望みますが)
audi a8
AUDI A8 2009年 京商製 1/43
画像をクリックするとフロントの拡大画像に代わります
2007/02 追加
 最近の情報によるとアウディ A8の特別仕様車が首相公用車となったようです。

2010/11 追加
 A8はアウディの最上級車で、メルケル首相の首相専用車は2005年式の特別仕様です。W型12気筒 6L(450HP) DOHCエンジンを搭載し、全輪駆動方式で最高速250km/hの性能です。ボディ全体が鋼板で装甲されていて、手榴弾等の爆発に耐えられます。タイヤは銃撃されても走行できるランフラットタイヤです。室内には電話等の通信装置が完備され公務を行うことが出来ます。また備え付けのミニバーの飲み物を楽しみながら、DVDプレーヤーで映画を見ることも出来るそうです。
 ミニカーは2009年式ですので、ライト部分の形状が2005年式の実車とは少し違っています。(実車の画像)
 
 

VIP車 その他

 最後に現代のグロッサー メルセデスとして、ダイムラー クライスラー社の最近の旗艦も紹介しておきます。左側は一世代前のSクラスのプルマンです。(外形寸法 6213×1886×1480mm 車重 2776kg エンジン V12 6L 394HP 最高速度210km/h) 現在は新しいSクラスのプルマンがでていますのでフロントやリアは変更されていますがやたらと長いところは同じです。


 右側はマイバッハ62です。(外形寸法 6165×1980×1573mm 車重 2855kg エンジン V12 5.5L 550HP) ベンツのプルマンはビジネスライクなあっさりしたデザインですが、マイバッハは長さは同じくらいですがデザイン的には遊び心があってプライベートな車という感じがします。マイバッハは日本にも既に30台以上納入されているとのことですが、見たことありますか?

benz s600l pullman 1997      maybach 62 2003
MERCEDES-BENZ S600L PULLMAN 1997年
VITESSE製 1/43
MAYBACH 62 2002年 AUTOART製 1/43
 
以上で ドイツのVIPCARの紹介を終わります。  2006/07 作成、2007/02 追加、2007/06 追加 修正、2010/11 アウディ A8追加  2015/06 スマホ版ページ追加 2020/11 記載内容を修正