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フォード V8 (モデル 48) ベルリーヌ アメリカ 1936年
前述したように1932年に登場したフォード V8は1935年に外観が大幅に変更されてモデル 48となりました。V型に折れ曲がったフロントグリルや丸みのついたキャビンなどボディは全体的にモダンになりました。またトランクがリアに組み込まれたのも目新しい点でした。(なおトランク無し仕様もありました) ボディ形式はロードスター、クーペ、2/4ドア セダン、コンバーチブル、ウッディ ワゴン、ピックアップとほぼなんでも揃っていました。アメリカでは1920年代にラジオ放送が始まり、フォード V8には車載ラジオがオプション設定されていたそうです。
このV型8気筒エンジンを搭載したシリーズはエンジンやシャーシに改良が加えられ1950年頃まで生産されました。フォードはT型の頃からヨーロッパなどに進出しており、V8も多くの国でノックダウン生産されていました。日本でも日本フォードがV8を販売していました。ただし当時の日本ではタクシーとして使われたことが多かったようで、それらには4気筒エンジンを搭載したB型が使われていたようです。
フォード V8は1936年と1938年のモンテカルロ ラリーで優勝していますので、操縦性なども含めて高性能な車だったようです。ただフォードは販売面ではライバルのGMに負けていました。1930年代前半のフォードにはこの大衆車と高級車リンカーンの2つのブランドしかなかったのに対して、GMにはシボレーなど6つのブランドがあり市場のニーズにきめ細かく対応していたからでした。(それ以外にも宣伝が下手だったことなど理由は色々あったようですが。。)
ミニカーは2014年に発売されたイクソの廉価版ブランドのホワイトボックス製です。イクソが製作している雑誌付きミニカーとほぼ同じ物がホワイトボックス ブランドで発売されています。このフォード V8もミニカー付雑誌「世界のタクシー」(ALTAYA Taxis du Monde)のNo.20用に作られたタクシー仕様を流用しています。安価な雑誌付きミニカーがベースですので仕上げレベルは簡素ですが、プロポーションなど基本的なところは結構良くできています。この時代のフォード セダンのミニカーは少ないので、その点では貴重なミニカーです。なおミニカーの台座には1937年式と明記されていますが、1937年式はフロントのデザインが変更されているので、1936年式としました。(アメリカ車の年式は年度制なので解釈しだいですが) 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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クライスラー エアフロー ツーリング セダン アメリカ 1936年
戦前のクライスラーの革新的な乗用車エアフローは1934年に登場しました。エアフロー(Airflow:空気の流れ)という名前が示すように、実用車の外形デザインに空力的な処理を本格的に取り入れた画期的な車でした。直立したラジエータと独立したヘッドライトが一般的であった時代に、曲線で構成された滑らかなボディとボディと一体化したヘッドライトを持つこの車は当時としては極めて先進的なデザインでした。4ドアセダンと2ドアクーペの2タイプがあり、当時のフルサイズの大型車では一般的であった8気筒5.3L(130HP)/4.9L(122HP)エンジンを搭載し、最高速は145km/hの性能でした。
このデザインは一般ユーザーには奇異なデザインだと受け取られ、また新しい構造のボディに製造不良の問題があり販売は芳しくありませんでした。その為1935年にはフロントグリルのデザインを変更しています。1936年にリアにトランクが追加され、1937年にもフロントのデザインを変えていますが、販売不振は解消されず、1937年に生産中止となりました。スチール製流線形ボディによる車体構造は技術的には優れていて他社に多大な影響を与えた車でしたが、一般ユーザーには理解されずエアフローは商業的には失敗作でした。(この手の先進的なデザインの車によくあるパターンなのですが)
ミニカーはイクソ製で、2011年に発売されました。リアにトランクのある1936年式をモデル化しています。プロポーションが良く、フロントグリルとヘッドライト、Aピラーについたミラー、室内などがリアルに再現されていて良い出来ばえです。ただサイドビューを見ると、窓の開口部が少し大きめに感じる点と、大きすぎるワイパーが作動状態のように垂れ下がっている点がいまひとつです。なおこのミニカーはもともとはフランスのミニカー付き雑誌「VOITURES CLASSIQUES」シリーズのNo.49用に作られた物でした。このイクソのカタログモデルではワイパーをエッチングパーツに変えるなどして仕上げレベルを上げて、雑誌付ミニカーとは差別化しています。イクソはホワイトボックス ブランドでもエアフローを発売しています。エアフローは有名な車ですが、このイクソ製がでるまで1/43量産ミニカーではモデル化されていませんでした。 よく見かけるのはシグネチャーの1/32で、あとはホワイトメタル製のブルックリン(BROOKLIN)とレックストイ(REXTOY)ぐらいでした。(ディンキーの戦前モデルもありましたが、さすがに古すぎます) 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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パッカード スーパー エイト コンバーチブル アメリカ 1937年
パッカードは航空用エンジンの生産でも有名で、第1次大戦中はV型12気筒航空機エンジンを量産しました。第1次大戦後の1924年に8気筒5.9L(84HP)エンジンを搭載するシングル エイトを発表し、この車はツイン シックスの後継車として成功し、生産台数でキャディラックを追い抜きアメリカの高級車No.1の地位をかためました。1930年代になると、世界大恐慌によって高級車の販売が低下しパッカードは販路拡大の為、中級車市場に進出しました。1932年に6気筒エンジンを搭載した廉価版のライト シックスを発表しましたが、これは評判が悪くすぐに8気筒エンジンに戻しました。
1935年にはシングル エイトの後継車として新型8気筒エンジン(4.6L 120HP)を搭載したスーパー エイトが登場しました。スーパー エイトはホイールベースが120インチであったことから、120とも呼ばれています。スーパー エイトは前輪独立懸架で4輪油圧ブレーキが装備され、パッカードとしては破格の低価格でした。あこがれのパッカードが安く買えるということで、スーパー エイトは大ヒットしました。1937年にはさらに低価格の6気筒エンジン搭載の110/115を発売しました。この年にパッカードは同社の年間最高生産台数(約11万台)を記録しました。この中級車シリーズは一時的にパッカードの業績を上げましたが、パッカードのブランドイメージを下げることにもなりました。
パッカードはその後、8気筒エンジンを搭載するスーパー エイトの上級車スーパー エイト 160/180などを発表し、高級車マーケットが縮小する中で1930年代を乗り切りました。1941年にはスーパー エイト 180の後継車のクリッパーが登場しました。なお旧型の180の製造ライン設備がソ連政府に売却され、それを使ってソ連のVIP専用車ZIS 110が製造されました。(実車画像→ ZIS 110)
ミニカーは1983年に発売されたソリド製です。コーチビルダー ディートリッヒが架装したスーパー エイトのコンバーチブル ビクトリアと呼ばれた車をモデル化しているようです。この車はアメリカ式の大柄なオープンボディの2ドアコンバーチブルで、やや大きめの幌が付きリアバンパー上に大きなトランクを載せていました。このミニカーが発売された当時のソリドのクラシックカーはクラシックカーを専門としていたリオほど凝った作り方をしていませんでしたが、当時のクラシックカーのミニカーとしては値段相応で文句のない良い出来ばえでした。このスーパー エイトもフロントグリルの雰囲気や室内などがきちんと再現され良く出来ていました。なおフロントグリル全体がメッキされていますが、実車ではスリット部分以外はボディ同色となっていたのがほとんどでしたので、その点は値段相応とはいえやや残念でした。ドアが開閉するギミック付きです。ソリドはバリエーションで幌を開いたタイプ(型番4099)と以下のセダン(型番4047)もモデル化していました。なおフロントグリル上の鳥のマスコットは、パッカード家の紋章に使われていたペリカンをイメージしたものとのことです。 以下はフロント(マスコット拡大)/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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GM シボレー マスター デラックス クーペ アメリカ 1937年
馬車製造会社を経営していたウイリアム C デュラントは1908年にGM(ジェネラル モータース)社を設立しました。GM社はキャディラック、オールズモービルなどを買収して拡大していきました。財務の悪化で経営権を剥奪されたデュラントは1911年にシボレー社を設立し低価格の大衆車を開発しました。最初のシボレーは6気筒4.8Lエンジンを搭載したクラシック シックスで、安価ながら高性能だったので成功しました。シボレーの成功でデュラントはGMの経営者として復帰し、1916年にシボレーはGMの大衆車ブランドとなりました。
1915年にシボレーはフォード T型に対向してモデル 490(4気筒2.8Lエンジン搭載)を発表し、名前どおりの490ドル(フォード T型と同じ値段)で販売しフォード Tのシェアを奪い始めました。1923年にフォード T型より少し良い品質のシューペリア(SUPERIOR 4気筒2.8Lエンジン搭載)を発売してヒットさせ、さらに4気筒エンジン搭載のフォード A型に対して6気筒エンジンを搭載したACシリーズを1929年に発売しました。1931年にはフォード A型を抜いてシボレーはベストセラーカーとなりました。(実車画像→ GM シボレー AC シリーズ)
ミニカーはこの時代のアメリカ車をモデル化しているイギリスのブルックリン製です。ブルックリンのミニカーはホワイトメタル製でハンドメイドの少量生産品です。少量生産なのでほとんどのパーツが金属製で、手に持つとずっしりと重く存在感があります。これは1937年に登場したシボレーの上級グレードのマスター デラックス クーペをモデル化しているようです。縦長のフロントグリルや当時の流行りであった流線型ボディをうまく再現していますが、横から見ると窓が少し小さく感じます。プロポーション的には実車のイメージを強調するデフォルメがされているようです。この時代のシボレー乗用車のミニカーはフランクリン ミントやダンバリー ミントの1/24がありますが、それ以外はあまりミニカーになっていませんので、その点で貴重なミニカーだと思います。 以下はフロント/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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GM キャディラック V16 クーペ デビル アメリカ 1938年
1930年代中頃ののキャディラックのラインナップは50、60、70、75、80、85、90といった7シリーズ構成でした。50/60シリーズにはV型8気筒4.1L/5.3L/5.7L、70/75シリーズにはV型8気筒/5.3L/5.7L、80/85/90シリーズにはV型12気筒6L/V型16気筒7.4Lなどのエンジンが搭載されました。それぞれのシリーズにはリムジーン/セダン/クーペ/カブリオレなど様々なボディ形式が用意され、この車種構成で年間に約3万台弱を販売していました。一番売れたのはV型8気筒エンジン搭載の60シリーズだったようです。当時ライバルであったパッカードは約10万台を販売しており、この頃はまだキャディラックは販売台数で負けていました。
1938年にモデルチェンジしたキャディラックは次の1940年代への先駆けとなる斬新なデザインとなりました。当時流行していた流線型を取り入れつつ、リアフェンダーやトランクの形状が近代的な3ボックス スタイルに変わろうとしていました。1938年にはサイドバルブ式を採用した新しいV型16気筒エンジンが登場しました。このエンジンはVバンク角を従来のOHV方式90°から135°に広げ、従来の半分の部品で構成されていました。排気量は7Lと少し小さくなりましたが、185HPに性能は向上していました。このエンジンは高さが低くなったので、ボンネットを下げたボディデザインが可能となり重心が下がったことで操縦性が良くなりました。このエンジン搭載車は1940年まで生産されました。
ミニカーはこの時代のアメリカ車をモデル化していたフランスのレックストイ製で、1988年頃に発売されました。V型16気筒エンジンを搭載した最上級のキャディラック 90シリーズ クーペ デビルをモデル化しています。クーペ デビルとは運転席(前席)の屋根だけがオープンになっているフォーマルな用途に使われるセダンのことです。レックストイはホワイトメタル製でグリルやバンパーなどが金属製パーツで構成された重厚な作風で、昔のアメリカ車をモデル化するのには打ってつけの作風でした。このキャディラックも実車の雰囲気に合わせたフォーマルなツートンのカラーリングで実車がうまく再現されていて、1980年代のミニカーとして良く出来ていました。フロントグリルの先端に付いたマスコット(翼の付いた「空飛ぶ女神像」)もそれらしく再現してあります。レックストイはこのほかにもバリエーションでクーペとキャブリオレ、キャブリオレ ルーズベルト大統領公用車などもモデル化していました。以下はフロント(マスコット拡大)/リアの拡大画像です。(画像のマウスオーバー又はタップで画像が変化します)
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